世界160万人のデータから分かった“増えすぎ・増えなさすぎ”のリスクとは?(BMJ最新研究より)
妊娠中、「体重はどれくらい増えていいの?」「増えすぎるとダメって聞くけど…」と不安に感じる方は多いですよね。
2025年に医学誌BMJに掲載された最新の大規模研究では、世界160万人以上の妊婦さんのデータをまとめ、妊娠中の体重増加(GWG)が母体・赤ちゃんにどんな影響を与えるのかが詳しく調べられました。
結論を簡単に言うと…
🔍 結論:体重の“増えすぎ”も“増えなさすぎ”も、どちらもリスクが増える
妊娠中の体重増加は、米国医学研究所(IOM)が示す推奨値があります。
今回の研究では、この推奨値を
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下回っている(増えなさすぎ)
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上回っている(増えすぎ)
どちらの場合も、母体や赤ちゃんの健康リスクが増えることが分かりました。
では、それぞれどんなリスクが高まるのか?
わかりやすく説明します。
【① 体重が “増えなさすぎ” の場合のリスク】
体重があまり増えない妊娠は、一見「太らないから良いのかな?」と思われがちですが…
実は、以下のようなリスクが高くなります。
🔻 増えなさすぎで増えるリスク
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早産のリスク↑
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低出生体重(2500g未満)↑
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小さく生まれる赤ちゃん(在胎不当過小児)↑
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赤ちゃんの呼吸トラブル(呼吸窮迫)↑
母体としては帝王切開のリスクは少し低くなりますが、
赤ちゃん側のリスクが増えるため注意が必要です。
【② 体重が “増えすぎ” の場合のリスク】
逆に、体重が増えすぎる妊娠では、以下のようなリスクが高くなります。
🔺 増えすぎで増えるリスク
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帝王切開のリスク↑
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妊娠高血圧症候群↑
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大きく生まれる赤ちゃん(在胎不当過大児・巨大児)↑
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赤ちゃんがNICUに入る可能性↑
「赤ちゃんが大きく育つから良いでしょ?」
と考える方もいますが、実は、
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分娩が難しくなる
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出産時にケガが増える
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将来的な肥満リスクにも関連
など、デメリットが多いため注意が必要です。
【③ BMI(体格)によって適切な体重増加量は変わる】
今回の研究では、アジア人向けのBMI分類でも解析が行われました。
日本の方はこちらの方が当てはまりやすいです。
アジア人基準でわかったこと
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増えなさすぎ
→ 妊娠高血圧症候群、早産が増える -
増えすぎ
→ 帝王切開、大きい赤ちゃん(在胎不当過大児)が増える
世界共通で、適度な体重増加が最も母子にとって良いことが確認されています。
**【どれくらい増えればいいの?】
IOM(米国医学研究所)の推奨値一覧**
妊娠前のBMIが基準です。
| 妊娠前BMI | 望ましい体重増加量 |
|---|---|
| やせ(BMI<18.5) | 12〜18kg |
| 普通(18.5〜25) | 11〜16kg |
| 過体重(25〜30) | 7〜11kg |
| 肥満(30以上) | 5〜9kg |
※日本の厚労省の基準とは少し差がありますが、国際的にはこの基準が使われやすいです。
【妊娠中の体重コントロールのポイント】
妊娠中に無理なダイエットは絶対にNGです。
また「太ればいい」というものでもありません。
大事なのは以下の3つのバランスです:
✔ 食事の質を高める
・タンパク質、鉄、カルシウムを意識
・甘いもの・揚げ物の“量”に注意
✔ 軽めの運動を続ける
・散歩
・マタニティヨガ
・軽いストレッチなど
✔ 定期的な体重チェック
・理想の増加ペースを一緒に確認しましょう
・急な増加は妊娠高血圧症候群のサインになることも
【まとめ】妊娠中は「ちょうどよく」増やすことが大切
今回のBMJの大規模研究で、
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体重が増えなさすぎてもダメ
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増えすぎてもダメ
という、妊娠中の体重管理の重要性が世界規模で確認されました。
特に日本人はもともと痩せ体型の方が多く、
「増えるのが怖い」と体重を抑えすぎてしまう傾向もあります。
しかし、妊娠中の体重管理は赤ちゃんの命にも関わるとても大切なポイントです。
不安がある方は、産婦人科の先生、助産師さん、そして当院でもお気軽にご相談くださいね。














